2016年1月19日火曜日

連合が共産党を排除する理由

世に倦む日々さんの

民主党の労組系比例候補を見る - なぜ連合は共産党を拒絶するのか 

http://critic20.exblog.jp/25201742/
の感想

連合が共産党を排除するのは当たり前だと思います。両者の綱領を読めば、共産党は自由市場経済(資本主義)を究極的には悪として否定していますが、連合は否定していません。

共産党がそのように捉える理由は、窮乏化法則を根拠に貧困が原理的必然と考えているからでしょう。例えば、敗者の発生しないスポーツというのは存在しません。スポーツのルール上、敗者の発生は原理的に避けられない。共産党は、スポーツの敗者と同様に貧困も自由市場経済上では原理的に避けられないと考えています。現実のスポーツで負ければ単に悔しいだけだが、経済で負ければ死に直結する、従って自由市場経済は究極的には悪である。共産党の思想を要約すれば、このようなものでしょう。

連合はそのようには考えていません。彼らは貧困を交通事故のようなものと考えています。交通事故はエラーであり、ゼロにすることは原理的には可能です。事故がゼロになったからといって、自動車の運転や製造が不可能になるわけではありません(スポーツの場合、敗者が存在しなくなればそれはスポーツとして成立しなくなる)。今は事故をゼロにするための具体的な方法が存在しないため、毎年何千人と亡くなっていますが、ゼロにすることは原理的には可能なのです。貧困も同様に、自由市場経済のエラーです。人間の不完全性によって種々の貧困問題が発生しており、それを社会は解決しなければなりませんが、それは原理的にはゼロにすることが可能なのです。連合の思想は以上のようなものでしょう。

このような違いがある両者は、問題解決のアプローチも根本的に異なります。共産党のアプローチはスポーツの廃止でしょう。つまり、資本主義経済を廃止して共産主義化することです。連合のアプローチは、交通法規順守や自賠責保険、自動運転技術の導入です。つまり、所得再分配や福祉政策、教育の機会均等です。連合から共産党のアプローチを見れば、自動車を廃止して事故ゼロを目指しているようなものと捉えるでしょう。確かに自動車を全面的に禁ずれば事故はゼロになりますが、自動車の利用によるベネフィットも全て失うことになります(自由市場経済の経済的豊かさの消滅に相当)。

現在の共産党の綱領を読むと、さすがに旧ソ連の惨状に対する反省があるようで、共産主義化や社会主義化は時機が来るまでしばらく保留し、連合と同様に所得再分配等を重視することが書かれています。これはプロ野球でいえば、完全ウェーバー制の導入を目指すようなものです。

しかしこれは「他に解決策が無いから、仕方なく必要悪として自由市場経済を認めてやるよ。でも、いずれは廃止する」と言っているようなものでしょう。連合は、将来的には自動車を廃止したいと言う人たちと、仲良くやりたいと思いますかね?

しかも、共産党の人達はスポーツの勝者を恨んでいる。現実のスポーツの敗者は、まともな選手であれば自分の力不足を悔やむだけで勝者を逆恨みすることはないが、共産党の世界観から見れば、経済の敗者は死に直結し、しかもその競争から逃れる術も存在しない。その見方からすれば、勝者に強い憎しみを持つでしょう。連合からみれば、交通事故の被害者が自動車に何ら欠陥が無かったにも関わらず、自動車メーカーを逆恨みするように見えていることでしょう。

貧困はスポーツの敗者でしょうか。それとも交通事故でしょうか。私はもちろん後者です。yoniumuhibiさんは前者のようにお見受けしますが、どちらでしょうか。